健康経営とは

メンタルヘルス・ラインケア

健康経営」この概念は、従業員の健康を企業の持続可能な発展に不可欠な要素と見なし、従業員の健康増進や働きやすい環境作りを通じて、生産性の向上や企業イメージの向上を図ることを目指しています。健康経営の考え方に基づいた具体的な取り組みは、「健康投資」と呼ばれています。「健康経営」、「健康投資」を行うことで、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化、ひいては業績向上や組織としての価値向上につながることが期待されています。

健康経営が普及した背景

日本では経済産業省が2012年に「健康経営優良法人認定制度」を始めたことで一般に広まりました。この制度は、従業員の健康管理を経営戦略として積極的に取り組む企業を認定し、表彰することで、より多くの企業が健康経営に取り組むことを奨励しています。健康への取り組みに力を入れることで、何が促進されるでしょうか。日本は高齢化が進み、今後その減少は止まらないとされています。そのような人材不足や高齢化の中で、企業は従業員の雇用継続のために、従業員全体への健康向上とそしてその意識の向上が必要です。近年、健康診断や保健指導の普及、また時間外労働の減少などにより、心血管疾患・脳血管疾患の労災認定件数は減少してきましたが、精神疾患労災補償件数は増加の一途を辿っています。精神疾患は、平均休業期間が心血管疾患・脳血管疾患のそれよりも長期になる傾向にあり、人材不足に拍車をかけることになります。そのため企業でメンタルヘルスを含めた健康意識の向上が不可欠です。

健康経営優良法人の取得に関して

健康経営優良法人により健康への取り組みに力を入れる企業であると社会的に認定されることにより、新入社員の獲得への弾みになります。企業の持続的成長のため、この健康経営優良法人となるためには、以下のような項目で審査されます。

  • 経営理念・方針
    • 明文化・健康経営の戦略
    • 情報開示・他社への普及
  • 組織体制
    • 経営層の関与
    • 実施体制
    • 従業員への浸透
  • 制度・施策実行
    • 目標設定、健診・検診等の活用
    • 健康経営の実践に向けた土台づくり
    • 保健指導
    • 生活習慣の改善
    • その他の個別施策
  • 評価体制
    • 健診・ストレスチェック、活性度の指標
    • 労働時間・休職
    • 健康経営施策の効果検証・改善

健康経営優良企業取得によるいくつかの詳細な効果の程は、下記の資料をご参照ください。

参考:健康経営の推進について 令和4年6月 経済産業省 ヘルスケア産業課

ただし、健康経営優良法人認定前に、各都道府県が認定する健康企業宣言を取得する必要があります。

健康企業宣言の取得に関して

健康経営優良法人に認定されるためには、都道府県で実施される健康企業宣言(ただし都道府県で名称は異なる)に認定される必要があります。その評価項目は、

  • 健診等に関して
    • 従業員の健診受診率・・・100%で15点割り振られる
    • 40歳以上の従業員の健診結果を協会けんぽへ提出・・・生活習慣病の予防
    • 健診の必要性の周知・・・従業員の健康意識向上を図る
  • 健診結果の活用に関して
    • 健診結果が「要精密検査」「要治療」の受診率・・・健診の意味
    • 該当者の特定保健指導の実施率・・・健康意識の向上
  • 健康づくりのための職場環境に関して
    • 職場の健康づくりの担当者を決めているか
    • 従業員が健康作りについて話す場の提供・・・衛生委員会等の活用
    • 健康測定器の設置・・・血圧計・体脂肪測定器
    • 職場の健康課題を考えたり問題の整理
    • 健康づくりの目標・計画を立てて実行・・・安全衛生計画に盛り込む
  • 職場の「食」「運動「禁煙」「心の健康」に関して
    • 仕事中の飲み物・・・甘いものの取りすぎ注意、熱中症対策
    • 食生活・・・健康意識向上への取り組み掲示
    • 始業時のストレッチや体操
    • 階段活用・歩数・・・消費カロリー表
    • 従業員のタバコ
    • 受動喫煙防止策・・・屋外喫煙場所の設置と掲示
    • 従業員への声掛け
    • 話やすい職場づくり

上記の項目それぞれに達成度によって点数が割り振られており、80点以上/100点で健康企業宣言の第一段階を通過します。上記の項目のうちウェイトを占めるのは健診等に関して、そして健診結果の活用に関してです。多くの企業にてすでに取り組みがされている項目も多くあり、ぜひ取得を目指してみましょう。

他国の取り組み

アメリカでは「Corporate Wellness Programs」(企業の健康増進プログラム)など、類似の概念が用いられています。企業の規模にもよりますが、大企業は一般的により多くの財源と予算をウェルネスプログラムに割り当てることができるため、より包括的で多様なウェルネスサービスを提供する傾向があります。例えば、フィットネスプログラム、健康スクリーニング、メンタルヘルスサポート、栄養教育、生活習慣病の予防、ワークライフバランスの支援などです。

一方、中小企業では資源が限られているため、よりコスト効率の良いウェルネスプログラムを実施することが多く、従業員への健康教育セミナーやフィットネスチャレンジなどに焦点が当てられる傾向にあります。

また健康診断に関しては、多くの健康保険が健康診断をカバーしています。健康保険によりカバーされる健診の項目は変わりますが、加入している健康保険が100%カバーする項目、人によってはオプションで検査項目の追加を行います。日本の場合は国民健康保険や健康保険組合、アメリカの場合は民間保険会社への加入が主流です。日本では保険料の上限設定がなされていますが、アメリカではカバーされる範囲によって保険料が変わるため、プラン次第になります。2023年の平均的な個人の保険料は8000ドルを超えると言われています。(2023 Employer Health Benefits Survey)

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