集団分析を行ったが、その後どのようにアプローチすれば良いかわからない事業場は少なくないでしょう。ここではその取り組み方について解説します。
集団分析の基本原則
まず、プライバシーへの配慮が大原則です。集計・分析の単位が10人を下回る場合、実施者は対象となる全労働者の同意を得なければ、事業者に集計・分析の結果を提供してはなりません。これは、小規模な集団では個人が特定されやすくなるため、より高いプライバシー保護が必要とされるためです。ただし、衛生委員会等での事前審議の上で、職業性ストレス簡易調査票の57項目全ての合計点についての集団平均値を求める、仕事のストレス判定図を用いた分析などの場合は10人未満での集計も可能となっています。
ストレスチェックの効果的な実施と活用に向けて 令和4年 厚生労働省
ストレスチェックの質問項目の確認
ストレスチェックの質問項目を再度確認しましょう。下記3領域から構成されています。
1. 仕事のストレス要因
2. 心身のストレス反応
3. 周囲のサポート
高ストレス者の割合
高ストレス者に該当するのは、2. 心身のストレス反応の点数が高いもしくは、2. 心身のストレス反応が一定以上の点数、かつ1. 仕事のストレス要因、および3. 周囲のサポートの評価点が著しく高い場合です。高ストレス者が面接を受けやすいような、以下の環境づくりを行います。
- 社内での医師もしくは産業医面接が可能であることの周知
- 申し出た場合は面接の調整・実施
総合健康リスク
ストレスチェックの質問項目1.や3.(上記:ストレスチェックの質問項目の確認)から事業場全体の総合健康リスクが作成されます。事業場全体が全国平均・業種平均と比較し高かったか低かったか、高い場合はどの項目が要因となっているかを見てください。この健康リスクはどのようなパラメータから算出されるかと言うと、量的負担・コントロール度(裁量度)、そして上司のサポート・同僚のサポートの4項目が数値化され、前2項目は仕事の負担という尺度、後2項目は職場のサポートという尺度に変換されます。そして、この2つの尺度が総合健康リスクという形で算出されます。(これら4項目の出自に関しては、こちらの記事もご覧ください。)
総合健康リスクの数値は、高いほど労働者の健康リスクが高い状態であることを示しています。例えば、総合健康リスクが 120であれば仕事のストレスのために心理的ストレス反応、疾病休業、医師受診率等のリスクが 1.2 倍になるといわれています。
「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」厚生労働省
健康リスクを確認した後、寄与する4項目に目を移していきます。ここでよく混乱が生じる部分は、健康リスクは100を基準に算出され、寄与する4項目は100が基準にはなっていません。量的負担は5-12、コントロール度は4-11、上司の支援は4-10、同僚の支援は5-11の値を取り、それぞれスケールが異なります。これを覚える必要はなく、全国平均と業種平均から自社、部署がどれだけ高いか、低いかを確認してください。
4項目(量的負担、コントロール度、上司の支援、同僚の支援)を確認する時の注意点は、量的負担は数値が高い場合は高ストレスを示しており、その他の項目は数値が低い場合に高ストレスを示すことになります。
部署・チームごとに確認
全体結果を確認した後、部署・チームで集計した結果に移ります。どの職場において健康リスクが高かったか、またどの項目が起因しているか確認し、管理・人事部・職場担当者と結果を共有します。(10人以下の集団分析を行った場合は、受検者の同意なしに情報共有はできないため、注意してください)その後、実際にその職場においてヒアリングや実地調査を行います。実地調査に関しては、主に衛生管理者や産業医の職場パトロールや巡視・労災や休職者の件数の確認、そして実際の従業員からのヒアリングなどです。その後、具体的な課題をリストアップしていきます。
対策と進捗状況の確認
リストアップした内容から改善計画をたて、進捗状況を定期的に確認していきます。例えば1、3、6、12ヶ月目の確認です。その効果に関しては、職場従業員のヒアリング・ストレスチェック・休職者の期間や人数(長期間での確認が必要)を参考改善の有無をチェックします。
対策に関しては以下の記事もご覧ください。
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