喫煙と健康被害

作業環境管理

2020年4月より、健康増進法の一部を改正する法律が前面施行となりました。望まない受動喫煙の防止を図ることがその目的です。喫煙のために、各業種において、喫煙室の設置が必要となりました。

1, 飲食店・多数の利用者のいる施設・旅客運送事業船舶・鉄道…原則屋内禁煙(飲食店の場合、事業規模等から設置可能となる条件が異なる。例:喫煙専用室・加熱式たばこ専用喫煙室・喫煙目的室・喫煙可能室)

2, 病院・学校…敷地内禁煙(屋外にのみ表示など必要な措置がとられた場所に、喫煙場所設置可)

3, 上記以外の施設…原則屋内禁煙(気流や排気など基準を満たした専用室のみ喫煙可)

設置基準に関しては、以下参照ください。

厚生労働省ホームページ「なくそう!望まない受動喫煙。」

喫煙による健康被害

喫煙の健康被害としては、がんが挙げられます。

男性では、唇・口腔・咽頭がん(2.6)、喉頭がん(5.5)、食道がん(3.4)、肺がん(4.8)、胃がん、肝がん(4.8)、膵がん(1.6)、大腸がん、腎盂・尿管・膀胱がん(5.4)、女性においてもこれらのがんに加え、乳がん、子宮頸部がん(2.3)の罹患リスクが上昇します。

また、呼吸器疾患(喘息・COPD等)、心血管疾患(脳卒中・虚血性心疾患等)(男性1.5, 女性2.0)のリスクが増大し、他、枚挙に暇がありません。

参考:Kota Katanoda, et al. Population Attributable Fraction of Mortality Associated with Tobacco Smoking in Japan: A Pooled Analysis of Three Large-scale Cohort Studies. J Epidemiol. 2008; 18(6): 251–264.

参考:国立がん研究センター「多目的コホート研究の成果2016年12月」

これらは、たばこ煙に含まれる化学物質に起因します。特にニコチン[依存性]、タール[発がん性]、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、一酸化炭素(CO)・窒素化合物(NOx)[酸素運搬能低下]、また体内でのこれらの物質の影響により、活性酸素が増加することで、動脈硬化、発がん性の上昇、老化を招きます。

副流煙はどうか

副流煙ではどうなのでしょうか。副流煙はたばこのフィルターを通過しないため、主流煙よりも化学物質が多いと言われています。

加熱式たばこ・電子たばこ・紙巻きたばこの違い

電子たばこはリキッド(リセリンやプロピレングリコール溶液)を加熱し蒸気を発生させます。日本国内で販売されている電子たばこにはニコチンは含まれていません。また、たばこ葉は使われていません。

加熱式たばこはたばこ葉を燃やすのではなく、たばこ葉を加熱することで蒸気を発生させます。

発生物質に関しては、国内で発売される電子たばこには依存性の原因となるニコチンやたばこ葉を使用しないためタールは含まれません。ただし、発がん性、気道・粘膜障害性のあるホルムアルデヒド、アセトアルデヒドは含まれます。加熱式たばこでは、喫煙時の室内ニコチン濃度は紙巻きたばこより低く、主流煙に含まれる主要な発がん性物質(ホルムアルデヒド等)は、紙巻きたばこに比べれば少ないとされています。ただし、加熱条件の変化などで、測定できていない化学物質が存在します。商品・装置・技術進歩・立場や研究の違いなどから、意見の違いが存在します。

参考:Leon Kosmider, et al., “Carbonyl Compounds in Electronic Cigarette Vapors: Effects of Nicotine Solvent and Battery Output Voltage.” Nicotine & Tobacco Research, Vol.16(10), 1319-1326, 2014

参考:国立がんセンター委託事業費「たばこ情報収集・分析事業」による調査

参考:厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究「非燃焼加熱式たばこにおける成分分析の手法の開発と国内外における使用実態や規制に関する研究」

事業所での対策

小規模〜中規模事業所では、屋内喫煙所の設置をされるところよりも、屋外喫煙所を設ける事業所が多いです。その際は喫煙に関する掲示がなされています。

公共の福祉に反しない限り、嗜好品は自己決定する領域です。また、何がQOL(Quality of life)を高めるかは人によって違います。ただその際は、健康リスク等の再確認を行ない、自己だけでなく周囲の健康に配慮する必要があるでしょう。また、企業での衛生講話も有効でしょう。

*補足として、電子たばこは葉たばこを原料とせず、改正健康増進法の規制対象外となっていますが、施設の管理権限者が当該施設のルールとして、喫煙禁止場所では使用しない等のルールを定めることは可能です。

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