尿定性検査とは?
定期健康診断の尿検査は、試験紙で測定する定性検査です。定量検査というのもありますが、定性は量ではなく、試験紙によっておおよそそれぞれの項目がどれくらい出ているかを確認します。定性は定量より簡便な方法です。以下、(-),(+),(2+),(3+)の意味合いです:
(-)•••ほとんど出ていません。正常
(+)•••少し出ています。経過観察
(2+)•••それなりの量が出ている可能性があります。要受診
(3+)•••結構出ている可能性が高いです。要受診
定期健診の尿検査でチェックする項目は、尿中タンパク、尿糖、尿潜血で、尿中にそれらがどれだけ出ているか確認します。
尿検査は、主に腎臓から尿排泄における泌尿器の病態を反映、全身の病態を反映する時もあります。 ただし、直前の体調、食事、体質を反映する時もあります。
可能性と書いたのは、後述する偽陽性の可能性もあるためです。
尿定性検査は何を教えてくれる?
尿定性検査では、尿中に含まれる以下の成分を調べます:
1. 尿タンパク
• 腎臓が血液をろ過する際に、正常なら尿中にほとんど含まれないタンパク質が見つかる場合があります。これは、病態含め腎臓に何らかの負担がかかっている可能性を示します。
2. 尿潜血
• 尿中に血液が混ざっている状態です。目で見えなくても、顕微鏡や検査で検出される場合があり、泌尿器系や腎臓に異常がある可能性を示します。
3. 尿糖
• 尿に糖が検出されると、血糖値が高すぎる状態、または腎臓の糖排泄機能に異常がある可能性があります。糖尿病はその名前から、尿糖を反映する可能性がありますが、近年では、尿糖から疑うのではなく、血液検査にて判断します。体質としての腎性尿糖がおりやすい方もおられ、いつもがいつも糖尿病を反映しません。
病態を疑うなら
1. 尿タンパク
尿タンパクが出た場合、その仕組みを理解することが原因を見つける手がかりになります。通常、腎臓は血液をろ過し、必要なタンパク質は再吸収されます。しかし、この仕組みに問題があるとタンパク尿が出ます。
腎臓の糸球体は毛細血管の集合体です。血液をろ過して老廃物を尿路へ送り出し、体内に必要な物質はろ過せずに保持します。もし糸球体に障害がある場合、多量のタンパク質が漏れてしまいます。機能障害の例としては、糸球体腎炎やネフローゼ症候群が挙げられます。また、ろ過された後に体に必要なタンパク質を吸収する尿細管に異常があると、タンパク質が尿に混ざることがあります。薬の副作用や腎臓の炎症が原因となることがあります。
また、腎臓以外の問題も原因になります。例えば、血液疾患で異常なタンパクが作られたり、筋肉の損傷や赤血球の破壊で尿にタンパク質が現れることがあります。
日々、私たちの体内では、古い細胞は新たな細胞に置換されています。細胞の構成要素は主にタンパク質であり、私たちの体にタンパク質は欠かせません。ただし、タンパク質の摂りすぎや、細胞が何らかの原因で破壊される場合、尿タンパクが多量に尿中に降りる可能性があります。
2. 尿潜血
尿潜血が出た場合、腎臓や尿路(尿管、膀胱、尿道)に何らかの問題があると血液が尿に混ざり、潜血として検出されます。
まず、腎臓での問題としては、腎炎や腎結石が考えられます。これらの場合、腎臓自体が炎症を起こしたり、結石が粘膜を傷つけることで血液が尿に漏れ出します。また、膀胱や尿道の異常では、膀胱炎や尿道炎が原因となることが多く、特に女性は膀胱炎になりやすい傾向があります。トイレを我慢する習慣は慢性膀胱炎の一因です。
さらに、腎臓や尿路以外の要因としては、激しい運動や月経の影響で尿に血液が混ざることもあります。この場合は一時的なものが多く、安静後の再検査で尿潜血が陰性となることがほとんどです。
体質としておりやすい方、既往歴として結石があり潜血がおりやすくなった方もおられます。そのような場合は、定期検査を受けるとともに、今後の変化を捉えるため、尿色の変化(色の濃さ、赤、オレンジ等)や判定の上昇がないかも確認していきましょう。
3. 尿糖
通常、血液中の糖は腎臓でろ過された後、尿細管でほぼ完全に再吸収されるため、尿中にはほとんど糖が含まれません。しかし、何らかの理由で再吸収が追いつかない場合、尿に糖が出てしまいます。
まず、一般的な原因は血糖値の上昇です。糖尿病では、血糖値が高くなりすぎて腎臓が処理しきれず、糖が尿中に漏れ出します。また既に診断を受け治療が開始されている場合、尿中に糖分を排泄する薬剤が処方されている場合があります。そのような方は尿糖が(2+)(3+)で出ることも多くあります。血糖値やHbA1cの数値を手掛かりに生活習慣の見直しを行います。
一方、血糖値が正常でも、腎臓の糖を再吸収する機能が低下する腎性糖尿という状態もあります。これは腎臓そのものの問題で起こり、糖尿病とは異なる原因です。このような体質の方もおられるため、現在、糖尿病の診断は血液検査を含めて行われます。
甘いものを食べ過ぎた直後や、一時的なストレス、妊娠中でも尿糖が検出されることがあります。この場合は一過性のもので、通常は心配ありません。
再検査の重要性
尿定性検査の結果は、一時的な身体の状態に影響されることが多いため、異常が見られた場合には再検査を行うことが非常に重要です。安静にした状態や空腹時に検査を受けることで、より正確な結果を得られます。
生活習慣改善の指導
再検査でも異常が続く場合、生活習慣を見直すことで改善できることもあります。
1. 腎臓への負担を減らす
• 塩分控えめの食事を心がけ、水分を適切に摂取する。
2. 糖尿病リスクの軽減
• 食事のバランスを意識し、血糖値を安定させるために運動習慣を取り入れる。
3. 泌尿器系の健康を守る
• 尿路を清潔に保つ。
• 十分な水分を摂ることで尿の円滑な流れを確保する。排尿を我慢しないことや適切な排尿習慣を心がける。
まとめ
尿定性検査にて、再検査や要受診の判定となった場合は、体調を落ち着けて、検査を受けましょう。腎臓の病態は、生活習慣による影響を受ける時もありますが、自身では解決できない病態(自己免疫疾患等)が隠れている場合もあります。結果を蔑ろにせず、判定通りに行動しましょう。
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