ALT上昇は何を教えてくれる?
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は肝臓の細胞に含まれる酵素です。ただし、肝臓の健康状態に関わるものだけではありません。その背後には生活習慣によるものや他の病態が潜んでいることがあります。
健康の範疇で上昇する場合もある
健康の範疇で上昇する場合もあります。下記のようなケースに該当しないか、まず振り返ってみてください。
- 食事や飲酒:前日や数日前に高脂肪の食事を摂取したり、飲酒したりすると、肝臓に一時的な負担がかかり、ALTが高めに出ることがあります。
- 薬の影響:多くの薬剤(抗生物質や鎮痛薬、サプリメントなど)は肝臓で代謝されるため、肝機能に負担をかけ、ALT値が上昇することがあります。
- 激しい運動:健診の1〜2日前に激しい運動を行った場合にもALTが上昇することがあります。筋肉の疲労や軽度の損傷が肝臓にも影響を与え、酵素が一時的に上昇するのです。ただ、一般的にはALTよりASTがより上昇する傾向があります。
病態を疑うなら
高い数値であれば、他の肝機能項目であるASTやγ-GTPの数値を加味し、肝臓の疾患を疑います。近年では飲酒機会の減少、デスクワークの増加などから、非アルコール性脂肪性肝疾患や非アルコール性脂肪肝炎が増加しています。非アルコール性脂肪性肝疾患は、主に生活習慣・甘いもの・脂っこいもの、肥満等で肝臓が疲弊している状態です。この状態が長期で続くと炎症の脂肪肝炎に進行する可能性があります。上記の生活習慣の調整が必要です。飲酒機会の多い方では、アルコール性の可能性もあり、飲酒量や休肝日の調整が必要になります。
再検査の重要性
ALTが30U/L以上であれば、肝臓に何かしらの負荷がかかっている状態、慢性肝臓病の可能性も出てくるため、ALTの上昇により再検査となった場合は、体調を整えて再検査を受けましょう。再検査によって数値が落ち着いていれば、一過性の上昇であると判断できますが、再検査でも高い場合は、脂肪肝や肝炎などの可能性を考慮し、詳細な検査(超音波やCTスキャン、ウイルスマーカーの測定など)が必要になることもあります。
生活習慣改善の指導
近年は、飲酒量の減少、肝炎の治療の進歩により、重度の肝疾患で発見されることは少なくなってきました。ALTの要受診は、非アルコール性脂肪肝や直近の投薬・サプリや運動によるものも考えられます。これらに心当たりのある場合は再検査の時に伝える、生活習慣としてアルコールの節制、脂肪や糖分の多い食事を控えること、血液検査直前は過度な運動を控えることなどが推奨されます。
まとめ
ALTの上昇は肝臓のSOSサインかもしれませんが、すぐに深刻に考えすぎず、冷静に対処しましょう。受診者の生活背景や日常のストレスをお話しいただくことで、根本的な要因を探るヒントになるため、もし心当たりの習慣があれば、再検査の際にお知らせください。
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